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【書評】普遍性のある仕事論「好きなようにしてください」楠木建

キャリアに行き詰まっていたころ(正確に言えば今も行き詰まっている)、自分の仕事への向き合い方にも問題があるのではないかと思い至り、様々な仕事論の本を読み漁った。

しかし、世に仕事論の本は無数にあるが、個人的に琴線に触れたのはこの本と「実力派たちの成長戦略」山本真司著だけであった。

多くの本は、著者が理想とする姿を描いて見せるだけだったり、経験に基づく印象論だったり、普遍性に欠けるものが殆どだった。

楠木教授は一橋大学ビジネススクールで教鞭をとられているが、その仕事を通じて様々な実務者とも親交があり、そうした蓄積も深みのある仕事論に活かされていると感じた。

著者の仕事論の要点はいくつかあるが、個人的に好きなのは「仕事は実績だけで評価されるもの」と「仕事は相手に価値を感じて貰えて初めて成立する」の2つ。

思えば私は転職を複数形経験したせいで、ヘッドハンター目線で仕事を捉える捉えるようになってしまい、著者が述べるような仕事の原理原則を恥ずかしながら見失っていた。ヘッドハンターはことあるごとに「○○歳までにこういう経験がないと市場価値がない」とか「こういう仕事をするとレジュメの見栄えがよい」といった、仕事の本質から逸れた話を 延々とされる。しかも若い時期にそうした考え方に浸りすぎると、それが当然と考えるようになりがちと思う。

しかし、市場価値もレジュメの見栄えも結果論でしかない。しかも、こういうキャリアを積むべきという考え方に毒されると、自分がやりたいこと、価値が出せる仕事は何かということを起点に考えるのではなく、世の中的に見栄えの良い仕事はどれかといった視点で仕事を選ぶようになる。でもこれでは長期的に仕事で実績を上げ続けるのは困難だろう。

私も一時期「いまの年齢を考えたら、○○の経験を取りに行った方がよいのではないか」といった考え方に囚われていたことがあったが、本書を読むとそうした下らない考えを払拭される。結局のところ、自分が好きだと感じる仕事でなければパフォーマンスを上げられない。その上で実績を上げられるからこそ、次のステージに行けるのだ。そしてそれは成り行きでしかないのであって、自分の考え通りにキャリアを運ばせようとする考えは不毛だろう。

私個人は今も苦しい時期が続いているが、ここで苦しんでいるのも著者に言わせれば自由意思。もうしばらく粘ってみるつもりだ。